Wish List/HARCO

歌詞に余裕が無いのかな、と思った。「Ethology」のど真ん中HARCOポップが「Night Hike」に到達するまでに感じた微妙な違和感が、この「Wish List」でぼくの中で顕著に現れた、と思った。
でも次聴いたときにはやはりHARCOサウンドに魅了された。まず一言、気持ちいいのだ。音が。ポップであることの可能性として、HARCOサウンドメイクは突き抜けたものを持っているのは言うまでもない。
あとは歌詞。これは挙げた3作を見てもHARCOの内外における環境の変化がダイレクトに反映されているだろう。「Ethology」で縛られた現在という時間性は、「Night Hike」で微妙に流動性を帯び(つまりベクトルの変化・縛られた現在からの解放・解放された=自由で、不安な現在という時間)、「Wish List」では過去から照射された現在、つまり未来へのベクトルを獲得しているように感じる。その思いがHARCO自身の思いであるとともに、HARCOと近しい人との共有であるからこそ、「よりポップな」感情の描写、つまり感情の(他人との)共有への欲望が働いているからこそ、赤裸々なまでに生々しいポップなのだと思う。
これを混沌とするか成熟とするか、はじめは迷っていた。でも夜寝るときに聴き続けるうちに、これは間違いなくHARCOの成熟した姿なのだと思うようになった。この迷い、求める姿にHARCO、よりも青木慶則、という一人の青年を強く感じずにいられない。ある意味でここが彼の頂点であり、次をどう打ち出していくのか、楽しみであり、次はなかなか困難ではないのかそうではないのか、思ったりもするけれど。どの曲も良いのだが、「雲のリフト」のシリアスさが気になって頭の中でリフレインする。

Wish List

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