これは安易な自然回帰への志向ではない。これは悪意(Vice)だ。

アスファルトで固められた道を歩く人々。ぼくは土を掘る。その途方も無い深さ、暗さに目眩がする。土の匂いは気持ちが悪い。口に入るとざらざらする。アスファルトの道は臭いが無くて心地よい。コツコツという靴音がする。汚物(の予兆)がそこらじゅうに散らばっている。ひびが割れ、ガラスは曇り、やがてすべてが朽ち果てる街。アスファルトの街にレクイエムを。いつか諸人が、土に還る。何ひとつ答えなど無い。土を掘ると、ざくざく、という音と、無言の、土の声が、風や空や鳥や虫どもや、心臓の音と共鳴しているのがきこえる。ぼくの中に今沸き起こる悪意もいつか、この土の奥深くに埋められるのだろう。