ふと思い立ってSoren Moller Trioの「Let There Be Love Live」を聴く。思い立ったわけではなくてたまに思い出すのだ。でも硬質でちょっと小難しいという印象があり、肩が凝りそうでなかなか手が伸びなかった。演奏の大雑把な特徴は、硬質で美しく、それはある程度の緊張を強い(キースのそれ、ではなく現代的感覚のなせる業か)、しかし美しく冷たく、しかし冷たいがためにある種の懐かしさを胸に呼び起こすようだ。それで数多の欧州ジャズの中にあっても時折心がそそられるものがある。バラードの美しさは若くして突き抜けているものがあるように感じるが、アップ・テンポの曲も決して聴き逃せない。コール・ポーターの「Easy To Love」が白眉。5/4拍子で軽快に優雅に舞うトリオ。冷たく爽やかな風がコペンハーゲン・ジャズ・ハウスの聴衆のあいだを駆け抜けていくようだ。
で、ためしに検索してみたら、つい最近に新譜「Playlist」が出てるみたい。
http://www.myspace.com/sorenmoller
販売元はMUSIC MECCAという会社で、なかなか面白そうな作品をリリースしているみたいなのだけど、試聴できるところが無い!もっとがんがん試聴させて欲しい。
 
「Easy To Love」のテーマ部、左手のコンピングが涼しい風を呼び起こし、いま自分がどこにいるのか(ライブハウスの暗さと熱気と、ひんやりと心地よい風に、ほんの一瞬だけ本当に何もかも忘れて気持ちよくなる)を忘れてしまう。時間の感覚が退行し、寄せては返す空気の波を感じている。それは遠くなり近くなり、文字通り波打つ。この曲まるごと余すところ無く、バウンスしている。このウキウキ感(それはしばしば寂しさを伴うものだ)は、まるでビル・エヴァンスだとかあの頃のピアノ・トリオを聴いているときの気分とそっくりだ。