From a Smalltown

やっとこさ買って(近くの店にずっとあったから油断してたら、いつの間にか消えてたので、買った)、やっとこさ聴きました、From a Smalltown。大人なアルバムだね。一曲一曲丁寧に作られている。でも本音を言えば少し停滞がみえるかな?突き抜ける感じが前の作品に比べて、無い。それが悪いということではなく、がっちりとまとめたという。その作り手と、曲と、聴き手との距離感が、大人。あるいはずっと歌い続けてきた田中さんと、ずっと聴き続けてきたぼくと、作られた曲と、重ねられた思いと、そういうものがぼくの中に渦巻いているだけのことかもしれない。よくわからない。
あんなに好きだった空気公団や、サニーディ・サービスも聴かなくなってしまった。グレイプバインはいまだに聴いている。ぼくはたまに驚いてしまう。ぼくはいまグレイプバインを聴いているのだ、ということに。まあ、さして意味は無い。自分の糞が思ったよりちゃんと糞っぽいので驚いている、そんな感じだ。
70年マナーの「インダストリアル」はまじでかっこいい。今までのバインの中で一番カッコいい曲じゃないかしら。サビはモロバイン調のアリバイみたいなもんだが、メロがね。発狂しちゃうくらい良い。大人だよ、この抑えっぷりは。亀井さんが悪いわけじゃないが、もうちょいドラムがバーナード・パーディーみたいにタイトならもう言うことは何も無い。でもそれじゃやり過ぎか。「スレドニヴァシュター」は明らかに「指先」のシングルに付いてたスタジオライヴDVDのほうが良かったが、このざっくり感も良いだろう。歌詞は相変わらず一筋縄じゃいかないが、ぼーっとしてたらわからず脳天気にカラオケするんであろう毒と、一山越えたあとやっぱりやって来る迷いが良い。「岸」を思わせる田中・男の歌はどこまでも孤独で、それがぼくをいまも震わせる。
  
  
From a smalltown(初回限定盤)(DVD付) [Limited Edition]
  
  
ぼくが言うのなんかおこがましいのだが、一貫してグレイプバインに感じているのは、夢で流れていた音楽がそのまま出てきた、という感覚なんだ。もちろんそれは偽記憶なんだろうが、ある種のデジャヴュとノスタルジーがぼくとグレイプバインをつないでいるのは確かなんだ。そのデジャヴュとノスタルジーでぼくの欠けた心の補完を(相変わらず)しようとしているならこれほどあざといことは無いんだが…。