Red Moon/Moutin Reunion Quartet

Jean-Michel Pilk TrioのベーシストFrancois MoutinとあのGiovanni Mirabassi Trioでドラムを務めるLouis Moutinの双子の兄弟を中心としたユニット。ピアノが若きフランスの雄Baptiste Trotignonという最強トリオにRick Margitzaが絡んでいく。もう何というか鬼のようなカルテットだ。
この鬼神たちがいかなる演奏を繰り広げるのかとぼくも居住まいを正して臨んだのだが、確かに演奏は一級品。Francoisの正確で力強いピチカート、Louisの縦横無尽でシャープな手さばき、Trotignonの重戦車とも言われる豪快さと同時に兼ね備えた繊細さ、Margitzaのクールで少し違和感を付与しながらぐいぐいと引き寄せてくる独特の音などはすべて息を呑む抜群のテクニックである。ではあるものの、今ひとつのめり込めない。曲は「サヴォイでストンプ」を除けばすべてMoutin兄弟のものなのだが、どうも似たり寄ったりの楽曲が並ぶように思う。それにいまいち抽象的で、印象に残るメロディがなかなか浮かんでこないのだ。だから聴き返したいとあまり思わないし、聴き返すときにもとっかかりを見つけるのが大変なのだ。溢れるテクニックには驚嘆するのだけど、やっぱり心にグッとくるものが無いと、聴き返すには辛い。たとえばLouisが参加するトリオのピアニスト、Giovanni Mirabassiは演奏が凄いうえに曲も素晴らしい。このふたつが揃って、3人のテクニックが混ざり合うときに、最高のうねり、音楽の情熱がはじけ飛ぶのだ。そういうものがこのカルテットにはまだ足りないような気がする。それだけのことが出来るメンバーだと思うのだ。
このアルバムはジャケットが凝っていて、黒地の紙ジャケに丸い穴があいていて、中のCDが覗けるようになっている。でCDには赤い丸が4つあって、ジャケットの丸い穴にうまく合わせるとそこから赤い月が見えるようになっているのだ。CDを回していけば満月から三日月までさまざまな月の様相を楽しむことが出来る。なかなか斬新でユニークなアイディアだ。
それだけに、複雑な気分。パーソネルも最高、演奏も最高だし…。どうなんだろう?もうちょっとじっくり聴いてみるか、売っ払っちまうか、悩んでいる。