Hermeto Pascoal/FESTA DOS DEUSES

      神々の祭り (HERMETO PASCOLE E GRUPO)
(試聴)http://www.mp3stor.com/albums/72/16865/56770/hermeto_pascoal/festa_dos_deuses/
「奇才」エルメート・パスコアールの92年作、「神々の祭り」。タイトルから察するに静謐漂い光の降り注ぐ神々しい音楽なのかと思っていたぼくはそう、パスコアール初体験。カラスや豚が飛び交ったり、演説や話し声に音程をつけてユニゾンしたりと、CDの帯にも書いてあるとおりさながら「音のサーカス」であるが、印象としてはそれほど奇怪なものではなく煌びやかでエネルギッシュで、祝祭のように愉しげである。そしてやはり、ファンダンゴ、のようでもある。
とにかくチキチキ、とかカンカン、とか、音が気持ちいい。殆ど音の気持ちよさで出来てるアルバムなんじゃないか、と思うのだけどメンバーのスキルは極めて高い。パスコアールの音楽性もたんに「奇才」と呼ばれるだけではこぼれ落ちてしまう、高い作曲センスとそれを食い破るような突発的なひらめき、それらが輝かしく潤沢で、なんかもう愉快にばらまいちゃってる感じ。リラックスして愉しく聴けるところがこの作品のとても良いところだと思う。でも随所に(リズムの入れ方やコードの響きなんか)意気がこもっていて、やはり唸らせる。演説とユニゾンしてるのを聴いたときは「コレだよ、コレ!」と思わず声を上げ、もの凄いアンセムの到来を予感したものだ(結局ユニゾンするだけで終っちゃったのでちょっと残念ではあるけど)。14曲目の「FAZENDA NOVA」が豚が鳴いてるんだけどカッコいい。
数多の神も消え果たであろう90年代にこんなアルバムが生まれたというのはなんだか不思議な感慨のようなものがあるなあ。
さて、次なるパスコアール体験は、どこへ向かえばよいのでしょう?