live/Oslo 13

不勉強なことにスカンジナヴィアという地域がいったい何処を指すのかわからなかったわけで、意を決してグーグル検索してみたのですけど。何かを検索するというのは時に大変な勇気を要するのだ。無知の告白。やれやれ、スカンジナヴィアも知らないのかい?チャーハンの炒め方も知らないんじゃないのか?う、、それは何とか。
どうやらスカンジナヴィア半島というところがあって(あのあれか?イギリスの右側にある細長い不思議な地形?)、その半島及び周辺に位置する国々を北欧諸国と呼ぶ…。ノルウェースウェーデンフィンランドデンマークアイスランド。つまり、ぼくが非常に曖昧なイメージで「ヨーロッパジャズ」と呼んでいたものは、「北欧ジャズ」ならまだしも実は「スカンジナヴィアン・ジャズ」だったんですね!人に「最近ノルウェーとかスウェーデンとかあそこら辺のジャズが面ン白いのよ」なんて知ったふうな口きいてるぼくは、つまり万事において基礎がなってないので失格!(何が?)小学校から勉強しなおせ!(本当に。戻りてえ)
つうわけで、一応イメージとしてはちゃんと持っていた「スカンジナヴィアン・ジャズ」のこちらは範疇に入ります、ノルウェーの首都オスロの名を冠し、Jon Balke(p, key)を主体とするビッグ・バンド的な10人編成の「Oslo 13」。この名義ではこれがラストアルバムになるようだ。1992年のライヴ。
北欧ジャズ、ときくと近年のブームで何やらクラシックのような流麗でオシャレなイメージを持っているのだが、冒頭の曲を聴くとこれが北欧だ!と思う。冷たく濃い霧と冷たく深い闇を思わせるトランペットのソロから脂の乗ったような「濃い」ブラスセクションが耳をつんざく。これがスカンジナヴィアン・ジャズなのだ。何というか、雑食であり、時に艶やかで、時に猥雑ですらある。バルケのキーボードの乗せ方なんかコミカルであり、ヘンタイ的のようにも思える。その貪欲なまでの雑食性、(民族的にも)クロスオーヴァーなところがとても魅力なんだなんだ。
作品は独特のギラギラした民族的な旋律を持つ「Taraf」から、断片的なパーカッション〜強烈なブラス・セクションのブロウ〜フリーなアプローチとブラスで締める「Please Disturb-part 1」、「Off Balance」へと続く。次の「Zee Bloos」などを聴いても、なかなか一筋縄ではいかないこのグループの特徴が良く出ている。狡猾で確信犯的な忍び足。とでも言うか。練られたアンサンブルと音の隙間の絶妙なこと。その隙間にも、北欧を感じる。透明性というか、がらん、とした感じ。
「Finale-Intro」〜「Please Disburt-part 2」〜「Hvit vel」という終局の繋がりが良い。フリーなアプローチでトランペットとツインパーカッションがざわめき、演奏をグルーヴさせていき、同時にdisturbしていく。そのうちにフッと「Hvit vel」に入っていくのだけど、この曲が素晴らしいんだ!(また最後の曲に感動してしまった、と苦々しく思っている)まさに幻想的。宙へと舞い上がりそうな素敵なブラスアンサンブルと、煌くようなパーカッションに添えるお伽噺のようなバルケのキーボード。最後の一音までじっと聴き入ってしまう。こういう曲があるからぼくは北欧ジャズに惹かれるのだ。スカンジナヴィアンジャズに焦がれるのだ。

http://www.curlinglegs.musiconline.no/shop/displayAlbum.asp?id=26990


この「live」を最後にリーダー格のJon Balkeが抜け、新たにJon Balke with Magnetic North Orchestraを結成し、「further」というアルバムをつくっている。実質的にはOslo 13とメンバーが被っているそうな。こちらも合わせて聴きたい。

http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=1590809&style=music&cart=342469430&BAB=E

(「Anti-therapy」のギラギラと暑苦しくてエネルギッシュなサウンドから「Off Balance」で音の間隙が前作よりも意識されて各パートもより洗練・抽象化されていく、その過程が見逃せないだろう。そのひとつの結実としてみたときこのアルバムは一層重要なものであるだろうし、一音一音が傾聴に値する。そしてその抽象化の中からJon Balkeがどのような方向性を見出し次の音楽に萌芽させていったか、またBalkeが抜けた後の1300 Oslo、このふたつの傍流にも見るべきものがあると思う)